4890人が本棚に入れています
本棚に追加
**********
大阪出張の翌週。報告書を書きながら、琴音は知らず知らずにため息をもらした。
社内恋愛は、気恥ずかしさとともに、どこか後ろめたい気持ちを抱かせる。
仕事と恋愛という二律背反する事象が、同じ場所に存在しているからだろうか。
「茨木さん。提案書を見てもらってもいいですか?」
難解な間違い探しのように、先週とまったく変わらぬ態度で保志が琴音のデスクにやって来る。どぎまぎする琴音とは対照的に、彼はいたって通常運転だ。
「相沢精機の協働ロボットを売りこみたいんですよね」
展示会に足を運んでくれた医薬品原料メーカーが興味を持ってくれたというのだ。
展示会の応援に、わざわざ京都から応援に駆けつけてくれた湊係長に朗報を届けたい。そして、輸送費の百万円が無駄でなかったことを証明しなくては、と琴音は自らを律するように力強くうなずく。
最初のコメントを投稿しよう!