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「どの部分?」
と顔をあげた瞬間、唇に柔らかな感触。下唇を食まれたかと思うと、それはすぐに離れた。
「ッ!?!?!?!?!?」
口元を両手で覆って、弾かれたように席を立つ。首まで赤く染めて、琴音はわなわなと身を震わせた。
「男とこんな場所でふたりきりなんて、迂闊すぎやしませんか?」
アーモンド型の瞳に悪戯っぽい光が宿る。伊達眼鏡は、いつの間にかテーブルの上に置かれており、「キスするのにジャマですからね」と彼は悪びれる様子もなく舌を出した。
半個室状態とは言え、ここはミーティングスペース。だれかの目に触れる可能性は十分にある。
それ以前に、ここは職場だ。
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