くちづける王子と、恋に落ちた。

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「いまさらなんだが、旺佑(おうすけ)から家族の話は聞いているか?」 “保志(ほし)”を名乗っている旺佑だが、本名は森埜(もりの)。現社長は父であり、常務の久弥(ゆきや)は兄である。その事実を、まだ彼女に伝えていない可能性がある。 迂闊(うかつ)にも自分は地雷を踏んだかもしれない、と四宮(しのみや)(あせ)ったのだが、目の前の“息子の彼女”は、「はて?」と首を(かし)げる。 「家族の話というのは、保志くんが社長のご子息だということでしょうか?」 すでに聞いています、と言いながら、琴音(ことね)は困ったように笑みを浮かべた。 「……お言葉を返すようで恐縮なのですが」 ──保志くんの件は、社内の公然の秘密ですよ。
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