くちづける王子と、恋に落ちた。

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「…………は?」 たっぷり間を置いて、四宮(しのみや)の口から半オクターブ高い声がこぼれた。 冷静沈着ないつもの彼からは想像できないような様子に、琴音(ことね)は思わず親しみやすさを感じたのだが、それは四宮の矜持(きょうじ)を傷つけそうな気がしたので、黙っておくことにした。 「公然の秘密ってことは、みんな知っているくせに、なにも言わないってことか?」 若干(じゃっかん)混乱していることが(うかが)えたので、琴音は言葉を選びつつ、“秘密”について解説する。 「ええっと、まず社内において“保志(ほし)”という苗字は、どうしても社長と奥様の出会いを思い起こさせます」 先代社長──四宮や保志の祖父──の秘書をしていた保志(ほし)玲子(れいこ)を、当時学生だった森埜(もりの)冬馬(とうま)口説(くど)き落としたというエピソードは有名な話だ。 「それに……」
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