くちづける王子と、恋に落ちた。

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──実はオレの苗字、“保志(ほし)”じゃなくて“森埜(もりの)”なんです。 社長は父で、常務は兄で、四宮(しのみや)課長は従兄弟(いとこ)です。 神妙(しんみょう)面持(おもも)ちの彼に身構えた琴音(ことね)だったが、伝えられた内容に思わず目をパチクリさせた。 『元カノとまだ完全に分かれてないんです』とか言われたらどうしようかと思ったのだが、それはずいぶんと的外れだったようだ。 『“森埜”がたくさんいるとややこしいから、“保志”を名乗っているとばかり思ってたわ』とあっけらかんと答えれば、保志が大きく目を(みは)る。 ……知ってたんですか? 困惑(こんわく)している様子が手に取るようにわかった。いま目の前にいる四宮の表情は、あのときの保志を思い起こさせる。
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