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それは、呆れたような色を含んだ声だった。
「……また、そんなもの食べて」
だれもいないと完全に油断していた琴音は飛び上がらんばかりに驚く。
顔をあげれば、アーモンド型の瞳と視線がぶつかる。彼は、琴音が口にくわえていた栄養補助食品の反対側をかじると、悪戯っぽい笑みを浮かべてみせた。
「でも、酒ばっかりだったから、腹減ってたんですよね」
そう言って、もう一口かじりつく旺佑。接待帰りのその足で、ここに来たのだろう。柑橘系の香りに混じって、アルコールとタバコの匂いがした。
琴音は、目を丸くしながらも残り部分を咀嚼する。口の中の水分に反比例するように、甘い気持ちが溢れていく。
「保志くん……」
ようやく紡いだ言葉は、自分でも驚くほど揺れていた。
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