【番外編】深夜残業、オフィスにふたり

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頭の上で両手をひとまとめにされた琴音は、その大きな瞳をさらに大きくして、口をパクパクと動かす。驚きすぎて声が出ないのだ。 (なか)ばパニックに陥っている恋人を見下ろして、旺佑(おうすけ)は困ったように首を(かし)げてみせた。 「ヤバいな……。オレ、Sっ気はないはずなんですけど、いまの琴音さんのカッコ、結構キますね」 アーモンド型の瞳の奥に宿る扇情的(せんじょうてき)な光に、琴音はビクリと身体を固くする。そのくせ、酩酊(めいてい)したような甘い(しび)れが思考を奪っていくのだった。 「ほ、保志(ほし)くん……なにするつもりなの?」 ダメだ。質問の仕方を間違えた。完全に主導権を相手に(ゆだ)ねてしまっている。 心身ともに追い込まれた状況に(あせ)る琴音を眺めながら、旺佑はさも可笑(おか)しそうに(のど)を鳴らした。 「……なにをすると思います?」
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