【番外編】深夜残業、オフィスにふたり

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それは、舌なめずりの音が聞こえそうな目つきだった。 「ッ!?」 思わず顔をそむけた琴音(ことね)だが、その刹那(せつな)、首筋に“なにか”が触れた。 ビクリと身体を震わせて、ギュッと目を閉じる。ひどく身近な距離で、旺佑(おうすけ)の呼気を感じて、琴音の心臓が早鐘を打った。 ど、どうしよう……! 己が置かれた状況を処理できず、琴音はただただ慌てふためく。そのくせ、どこか甘く痺れるような感覚が、頭のてっぺんから足の指先まで駆け抜けていったのだった。 「ねぇ、琴音さん」 甘えるような声で名を呼ばれる。恐る恐る目を開ければ、旺佑のまぶしさを感じるような笑顔に視線がぶつかった。
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