【番外編】深夜残業、オフィスにふたり

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押し倒されて、ネクタイで手首を縛られる必要など、全然ないではないか。 琴音(ことね)旺佑(おうすけ)に気づかれぬように、静かに息を吐いた。呆気(あっけ)にとられて怒る気力もない。 「ネックレス、仕事のときも、ちゃーんと身につけてくださいね?」 期待に満ち(あふ)れた眼差(まなざ)しを感じながら、「わかったわ」と手短に答えた。シッポを振る大型犬の幻が見えた気がしたのだが、きっと気のせいだ。 「……プレゼントありがとう。大事にするわ」 「よろしくお願いします」 それ、祖母からもらったモノなんで。 さらりと言われたものだから、危うく聞き逃しそうになった。 「ちょ、ちょっと待って……」 祖母ってどういうこと? と尋ねる前に、旺佑が訂正する。 「正確に言うと、祖母が祖父からもらった婚約指輪をリメイクしたものです」
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