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「こ、婚約指輪ぁ!?」
思わず声があがる琴音だが、旺佑はというと、「二十歳の誕生日に祖母から譲り受けたんですよ」とけろりとした顔で言う。
旺佑のいまは亡き祖父──モリノコーポレーションの創業者──の妻への贈り物。付き合って1ヶ月と12日目記念、もしくはひと月遅れの二十代最後の誕生日プレゼントにしては、ずいぶんと荷が勝ちすぎる。
「えっと、保志くん……」
「“返す”なんて言わないでくださいよ?」
笑顔で釘をさす旺佑。こういうときの先回りの仕方は、兄の久弥や従兄の四宮課長に本当によく似ている。森埜の男たちの特徴だろうか……。
「……た、大切にします」
一粒のダイヤモンドがものすごく重いもののように感じる。普段使いしてもよいものなのだろうか? という疑問が頭をもたげたのだが、その価値を尋ねてはいけないような気がして、琴音は静かに押し黙った。
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