4890人が本棚に入れています
本棚に追加
**********
「旺佑くんって、琴音ちゃんと付き合わなくてもよくない?」
「は?」
火曜日の夜8時の少し前。しょうゆラーメンを目の前に、茨木千咲は、そう言い放った。
年季の入ったラーメン屋のカウンター席。割り箸を手に持ったまま、旺佑は隣り合う“恋人の弟”を怪訝な顔で見る。なにを言わんとしているのか、わからない。
「それって、どういう意味?」
「そのままの意味」
彼は素っ気なくそう言うと、湯気を立てるスープを静かに啜った。
「……オレが相手じゃ不満ってこと?」
パキッと音と立てて割り箸を割る。キレイに割れず、片方の箸頭だけが、いやに面積が広い。
最初のコメントを投稿しよう!