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「っていうか、旺佑くん、モテるでしょ? わざわざ五歳も年上の会社の先輩と付き合う必要ある?」
琴音ちゃん、確かに見た目はキレイだけど、なにかに夢中になったら、他のことは放りっぱなしだよ。前もそれで失敗してるんだから、次はもっと年上で包容力のあるひとを選ぶと思ってたのになー。
予想外だ、と千咲はこれみよがしに息を吐いた。
「……うるせーよ」
均等に割れなかった割り箸を眺めて、旺佑は渋面でつぶやいた。琴音の弟だから、と大人しく話を聞いていたが、なかなか痛いところを突いてくる。
──もっと年上で包容力のあるひと。
旺佑自身が一番気にしていることを、この男はサラリと口にする。どんなにがんばっても五歳の差は埋められないし、彼女に対しての“オトナの余裕”なんてものは常に入荷未定の在庫切れだ。
この割り箸みたいに、片方だけの気持ちが大きいのだ。
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