4878人が本棚に入れています
本棚に追加
/579ページ
「……でも、旺佑くんは、琴音ちゃんの“周りが見えなくなるほど、なにかに夢中になるところ”が好きなんだよね」
「?」
てっきり“別れろ”という言葉が続くと思って身構えたのに、千咲の声は弾むように明るい。
「しかも、それが琴音ちゃんの好きなところの一番最初に出てくるんだもんなー」
そう言って、彼は肩を揺らして笑った。その屈託のない笑顔を、旺佑は肩透かしを食ったような気分で眺めていた。“別れろ”と言われたときのために用意していた数パターンのトークスプリクトはまったくの無用であったらしい。
「旺佑くんが、琴音ちゃんの欠点を好きになってくれる男でよかった」
──オレは、琴音さんの恋人として認められたということなのだろうか……?
「だから、琴音ちゃん抜きで、旺佑くんと話がしたかったんだー」
ニコニコと微笑む千咲を、旺佑は神妙な面持ちで見つめる。
最初のコメントを投稿しよう!