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それから、半年と少し。──茨木琴音が、旺佑の生涯の伴侶となった日。
《結婚おめでとう》
入籍の報告をした瞬間、秒で返ってきたメッセージはあまりにもシンプルで感情の起伏がまったく読み取れない。
《ありがとう》
と旺佑は返事をする。既読はすぐについたが、その後の返信はなかった。
千咲はいつもそんな感じだから、と苦笑する琴音。たしかに、あの挑戦状を受け取った日から、用件のみのメッセージのやり取りが行われては途絶えるということを繰り返してきた。生存確認ができれば十分だ、という茨木家の人々の反応は、ひどく寛容だと旺佑は思う。
──まあ、それは千咲の魅力なんだろうけど。
研究者タイプで、興味がないことには基本的に無関心の義弟に妙に懐かれてしまった旺佑だが、不思議と嫌な気持ちはしなかった。
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