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森埜冬馬は、ひどく落ち着かない様子で客人を待っていた。客間を右へ左へとと移動する様子は、さながら動物園の熊だ。
「冬馬さん、落ち着いてください」
静かな、それでいてピシャリと言い放つ姿は、なるほど、あの明朗快活な父の秘書を務めていただけのことはある。
子育てに専念するため職を辞した彼女だが、いまだにそのマネジメント力には舌を巻く。保志玲子をモリノコーポレーションから奪ったことは、ある意味において失策であったのかもしれない。
そんなことを考えていると、インターホンが鳴った。
「あら。来たようですね」
軽い足取りで玄関に向かう玲子を横目で見送って、冬馬はどっかりとソファーに腰を下ろして腕を組む。
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