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さて、上の息子と甥っ子を見送った玲子は、アルバムをテーブルの上に置いて、ふわりと微笑む。
「茨木さん……ああ、琴音さんって呼んでもいいかしら?」
「は、はい! ぜひ……!」
嫁姑の対面式は、思ったよりもあっさりと幕を落とす。
思えば、本日観劇のため出かけている母と玲子には、このような場面はなかった。母にとって、“夫の有能な秘書”であった玲子は、冬馬が思っていたよりもずっと自然に森埜の家に馴染んでいた。
もっとも、そこには、水面下での争いもあったのだろうが、それを彼女は水面下のまま終わらせていたのだろう。
かくして、嫁姑の争いを未然に防いできた玲子にとって、茨木と仲良くすることは、造作もないことなのかもしれない。
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