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「そうそう。これは旺佑が小学校二年生のとき。学校で怪我をして、四針縫ったのよ」
側頭部の傷口を覆った大きなガーゼを、白いネット包帯で固定された旺佑が、虚無感漂う瞳のまま、車の後部座席で横たわっている一枚の写真。
「どうもトイレのドアに頭をぶつけたらしいんだけど、目撃者がだれもいなくて、事故の詳細は不明なの。旺佑もまったく口を割らなくて……。ひとりで戦いごっこをしてたんじゃないかと思ったんだけど」
「戦いごっこ?」
「ええ。戦いごっこ。この年代の男の子あるあるなんだけど、ナニモノかと急に戦いを始めるのよ」
クスクスと思い出したように笑う玲子につられて茨木も頬を緩める。
「わかります。そう言えば、うちの弟もそうでした」
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