【番外編】おとうさんも一緒(再び)

18/25
前へ
/579ページ
次へ
そんなこともあったな、と冬馬(とうま)も懐かしさに目を細める。活発で負けず嫌いな旺佑(おうすけ)は、なにかにつけてケガをしていた。 もっとも、頭を縫うようなケガは後にも先にもこの一回限りで、この白いネット包帯が、メロンの梱包(こんぽう)に用いられるネットキャップに似ていたことから、森埜(もりの)家においては、この事件を“憂鬱(ゆううつ)なメロン”と呼んでは、笑い話としていた。 「…………だから、転んだんだって」 何度尋ねても、を話すことのない旺佑。事件から十数年経過したが、あくまで“ドアに頭をぶつけた”と主張する。 「あら。そうだったわね。だったわね」 ふわりと笑う母に、息子はばつが悪そうに視線を()らす。わかるよ、旺佑。それが、男の矜恃(プライド)ってやつだ。まして、好きな女性(ひと)の前で披露されたくはないよなぁ。 アルバムのページをめくれば、次はサッカーの試合の写真だ。真新しいユニフォームに身を包んだ旺佑の頭にはネット包帯。
/579ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4890人が本棚に入れています
本棚に追加