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「旺佑は、琴音さんのことが、よっぽど好きなのね」
ふたりを見送った後、再びアルバムをめくり始める玲子は、ある写真に目を留めるなり、ひどく感慨深そうにそうつぶやいた。
「ねえ、冬馬さん。この写真、すごく似ていると思わない?」
この写真、と言いながら彼女が指差すのは、高校の卒業式の写真だ。黒い学ラン姿の旺佑が、それはそれは不機嫌な顔つきで写っている。めでたい日になんという態度だ。
「この写真、久弥が撮ったのよ」
クスクスと笑いながら、次のページをめくれば、嫌がる旺佑と、その肩を抱いて満面の笑みを浮かべる久弥のツーショット写真。相変わらずの兄弟仲だ。
「子ども扱いされるのが嫌なのよね」
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