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「ほんと、このときの旺佑、そっくりだわ」
だれに? と首を傾げれば、玲子はさもおかしげに小さく肩を揺らした。
「あなた、ですよ?」
冬馬は「心外!」と口をへの字に曲げる。我が息子ながら、あんなワガママな男と一緒にしないでもらいたい。
「……あなたと初めて会ったのは、ちょうど、このときの旺佑ぐらいだったわ」
悪戯っぽく笑む妻に、冬馬は「そうだな」とぶっきらぼうに返事をする。
父の秘書をしていた玲子が、ある日、急ぎの書類を自宅に届けに来るということがあった。玄関を開けた、当時高校生だった冬馬少年は、雷に打たれたかのような衝撃を受けた。
『冬馬さんですか? はじめまして。お父上の秘書をしております、保志玲子と申します』
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