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「主任の隣って、なんていうか“保志くんの指定席”って感じですよね」
「……指定された記憶はないのだけど」
改めて“距離感”を指摘され、琴音は戸惑う。
柑橘系の匂い。
少しカサついた唇。
熱っぽい瞳。
ふいに思い出した情景を消し去るように、琴音はブンブンとかぶりを振った。頬が熱いような気がする。
幸いにも、琴音の動揺に気づく様子はなく宮田は会話を続ける。
「でも、最近、保志くんなんだか元気ないですよね~」
「……四宮課長に詰められているからじゃないかしら」
違いますよ、とニヤリと宮田が笑う。悪戯っぽく瞳を輝かせて、彼女は内緒話をするようにささやいた。
「恋煩らいですよ」
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