いばら姫は、森の奥。

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「オレのせいで眠れていないようですし」 思いがけない保志(ほし)の言動に、琴音(ことね)の頬がみるみる紅潮(こうちょう)していく。 名古屋行きのあたりから、仕事に没頭(ぼっとう)していると、“あの日の出来事”を完全に忘れている自分がいた。 だが、ところどころに、これまでとは明らかに違う甘い雰囲気を感じているのも事実だ。 「っと、駐車場で話す話題ではないですね。気をつけて帰ってください」 鼻孔(びこう)をくすぐるのは、さわやかな柑橘系の香り。 琴音さん、と名を呼ばれ、キスされる。 どのくらいフリーズしていたのだろうか。気がつくと、保志の姿は、その場から消えていた。 ポツンと駐車場にひとり取り残された琴音は、思わずつぶやいた。 え? なに、これ?
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