4871人が本棚に入れています
本棚に追加
/579ページ
「オレのせいで眠れていないようですし」
思いがけない保志の言動に、琴音の頬がみるみる紅潮していく。
名古屋行きのあたりから、仕事に没頭していると、“あの日の出来事”を完全に忘れている自分がいた。
だが、ところどころに、これまでとは明らかに違う甘い雰囲気を感じているのも事実だ。
「っと、駐車場で話す話題ではないですね。気をつけて帰ってください」
鼻孔をくすぐるのは、さわやかな柑橘系の香り。
琴音さん、と名を呼ばれ、キスされる。
どのくらいフリーズしていたのだろうか。気がつくと、保志の姿は、その場から消えていた。
ポツンと駐車場にひとり取り残された琴音は、思わずつぶやいた。
え? なに、これ?
最初のコメントを投稿しよう!