眠る姫君に、くちづける王子。

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********** やっぱり、鬼原(きはら)くんに電話して、迎えにきてもらったほうがいいかも……。 琴音(ことね)は、久弥(ゆきや)たちと別れた場所から一歩も動くことができず、トランクの持ち手をにぎったまま、うずくまるように座っていた。 「おねーさん、大丈夫なん?」 声をかけてきたのは、明るい髪色をした二十代前半と思われる男ふたりだった。酒臭い呼気に思わず顔をしかめる。 「……大丈夫です」 ピシャリと言い放つ。正直、あまり大丈夫ではないのだが、男たちが浮かべる下品な笑みに、不快感ばかりが(つの)る。 「そんなん言わんと、オレらがちょっとキューケイできるところに連れていったげる」 「結構です」 冷たい口調で拒絶し、スマホを取り出す。鬼原に電話しようとした矢先、腕を(つか)まれ、乱暴に引っ張りあげられた。
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