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石橋を叩いて叩いてするから、渡りたいと思ったときには橋がなくなっていて、向こう岸に渡れないんだよな、茨木は。
そう言ったのは、確か四宮課長だったと思う。慎重になりすぎる琴音をそのように評して、彼は苦笑した。
四宮課長は、決して「ダメ」とは言わない。それが琴音の持ち味であるなら、それが活かせる最善の方法を考えてくれる。
──慎重になるのは、悪いことではないのだ。
琴音は、保志を抱きしめる腕にほんの少し力を加えた。
「保志くんは、“絶賛片思い中”だと聞いています」
そのひとのことは諦めたの? と問う声は少し震えていたと思う。
ようやく自覚した恋心を失う日が来たらと……想像し、琴音はおののく。
始まる前から終わることを考えているのはおかしいと言われるかもしれないが、前回の恋の終着点が、琴音を臆病にさせていたのだ。
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