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森埜久弥は、携帯電話をテーブルの上に置くと、ベッドに倒れこむ。
単身者向けの1Kのアパート。
次期会社経営者としての責任から逃れ、たどり着いた、久弥の“城”だ。
最低限の家具だけが置かれた殺風景な部屋だが、久弥にとって無駄なものを一切排除したこの空間は、非常に心地良いものだった。
家を出て、二年が過ぎた。
明かりのついていない天井を見つめて、久弥は思う。我ながら思いきったことをした、と。
モリノコーポレーションの跡継ぎとして、久弥は周囲の望む姿を演じてきた。これが自分の人生なのだ、と思っていた。
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