森の奥には、ふたりの王子。

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********** 森埜(もりの)久弥(ゆきや)は、携帯電話をテーブルの上に置くと、ベッドに倒れこむ。 単身者(たんしんしゃ)向けの1Kのアパート。 次期会社経営者としての責任から逃れ、たどり着いた、久弥の“城”だ。 最低限の家具だけが置かれた殺風景な部屋だが、久弥にとって無駄なものを一切(いっさい)排除したこの空間は、非常に心地良いものだった。 家を出て、二年が過ぎた。 明かりのついていない天井を見つめて、久弥は思う。我ながら思いきったことをした、と。 モリノコーポレーションの跡継(あとつ)ぎとして、久弥は周囲の望む姿を演じてきた。これが自分の人生なのだ、と思っていた。
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