call.0 嘲笑の代償

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「…………っ…………」 少年は頭を抑えながら,徐々に意識を覚ました. 身体が感じていた風はどこにもなく, 視界に広がっていたのは見知らぬ部屋の天井. ……どこかの家のソファの上に,少年は寝かされていた. 「……………………し,んで……ない……?」 「死んでないよ,君はまだ生きている.」 「!!」 ソファに対面するように存在しているデスクの傍のイスに座っていた男が立ち上がり, ゆっくりとその場で背伸びした. 「死にたかった? あの場所で.……君が通っている高校の校舎の屋上で.君は身を投げてズタボロになって,それで満足できた? 坂本 翔也くん. 」 「!? あ……あん,たは……一体……!?」 自分の正体を知っている男に対し, 少年は恐怖の表情を浮かべながら,怯えていた. 「……え? もう正体明かすべきなの? こういうのはギリギリまで秘密にしていた方が,ミステリアスでかっこよくない?」 「………….」 警戒を解くことなく,少年は彼を睨みつけた. 「視線が冷たいなぁ……分かった分かった.」 男は,デスクの上に置いていたホットコーヒー…………に見せかけた熱い麦茶を1口飲むと, 少年のそばにやって来てしゃがみ,少年と目を合わせながら言葉を紡いだ. 「俺の名前は,屋裏神(やちがみ) 来斗(らいと).声の代理人さ.」 「声の……代理,人……?」 「そう! この世に埋もれた悲痛な叫び,死の間際に瀕した時の一声,誰かに拾われることのなかった声をしっかりと聞き,声を発した相手にチャンスを与える仕事……って事にしてる(きり)」 最後をキメ顔で話されたものの,少年にはさっぱりだった. 「まあ,全員を必ず助けるわけじゃないけど……ね? 助けられなかったケースもあるし. それでここはその事務所なんだよ.」 「……声……僕は別に,助けてなんて言ってない…………」 「まあそうだねぇ.今回はいつもと違って君は依頼者でもなく,俺がたまたま見つけて話を聞きたくなった,それだけだよ.」 男は少年の手を優しく握ると,瞳を捉えたまま話を続けた. 「君が今もまだ死を選びたいなら好きにすればいい.ただ,その前に,どうせなら幸せの1つや2つ,噛み締めてからにしない?」 「幸せ……?」 「そう,君が叶えたいこと……したいことがあれば,しっかりそれをやり遂げる .どうせ死ぬなら,悔いなんて残しちゃいけないってことさ.」 男は少年からゆっくり離れると,大袈裟に腕を広げながら,高々に宣言した. 「ようこそ,秘密組織『LAST SIGNAL』へ!!」
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