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「こいつ、なんでも食べるんです。飼い主が、わがままな女の子だから、強気で何でも食べさせてたんです。ちょっと猫っ可愛がりとは違うけど」
「やっぱ、あっちぃー!」
ラジコン神赤ドテラの口にも運ぼうとした唐揚げを咄嗟に自分の口に放りこんだ美来は、またも叫んだ。
「で、なんで大晦日にうちのお風呂?」
フーフー言いながらも取り澄まして訊く。
イヤ、それは二の次だ。
なんで私はラジコン神赤ドテラに唐揚げを食べさせようとした・・・?で、なんで私はそうしなかった・・・?飼い主がわがままで強気な女の子ってなんだよ、それ・・・?あんた、なんでその猫をうちの風呂に入れてんの・・・?
例えラジコンであろうと、神の名をこいつに付けることは、私には出来ん!
赤ドテラは三室幸と名乗った。幸は炬燵に当たりながら、出されたお茶をズズズッと啜った。年季の入った赤ドテラの袖口が切れ切れになっている。ゴクリとお茶を飲むと、湯飲みを持っていない方の手で、「ねえ、チャーちゃん」と茶トラの背中を一撫でした。背中の毛が、幸の節ばった手に沿って大きく波を打った。
まさかとは思うが、今のはお“茶”と掛けてはいないよな・・・と言うか、チャーって、まんまじゃない。名付け親のセンスもどうかと思うが、と美来もつられてズズズッとお茶を啜った。
「それにしてもビックリしたよ。何やら物音がして人の声が聞こえたもんだから」
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