漂う

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「お父さん。」 そう言ったのは、9歳の娘の「岩島 寧々」だった。 「なんだい?」と、その父親――――「岩島 宏」は応じた。 「私たち、これからどこへ行くの?」 「さあ、まだわからない。こないだ紹介したおじさんがいただろう、「タカおじさん」。あの人が今、これからの計画を立てている最中だ。」 そういうと、娘は微妙な顔で「ふーん」と言った。 「そのタカおじさん、どこにいるの?」 「地球で待機しているさ。時期に合流することになっている。」 「暇ぁ。何して遊ぶ?」 「じゃあお勉強をしよう。この宇宙でしかできない、楽しいお勉強さ。」 この子の母、つまり私の妻は、医療機関に勤めていた。 たくさんの人を治療した。 じきに、「地球の武器」に体を蝕まれていった。 妻は、私の知らないところで死んでしまった。 私の知らないところで、骨すらこの世から消えてしまった。 妻のことを思うと、胸が痛い。 だから、私は妻の代わりにこの娘を守らなければならないのだ。
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