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第一章「恋は偶々……」 1 友
『わたしはいりません』
あたしの友人は夫から離婚を告げられたとき、そう思ったそうだ。
『だって、きみはおれのことを愛していないだろう』
次にその言葉を聞いて友人は、確かに愛していない、と実感したという。何故かといえば、夫である男に望まれた結婚だったからだ。男に懇願され、根負けし、結婚に至る。つまり、そういうことだ。
『ある期間一緒に暮らしていれば、少なくとも家庭的な愛情くらいは抱くだろう』
友人は男を嫌いではなかった、と、あたしに言う。
「だって色々な意味で、精神的とか、生理的とか、汗の臭いとか、あっ、それは生理的か、容姿がダメだとか……ともかく,その人のことが何処かで許容量以上に嫌いだったら、そもそも結婚を承諾しないでしょ」
『おれの両親は今どき珍しい見合い結婚だったが、おれには愛し合っているように見えたよ』
「そんなことを言われても、わたしはどう答えればいいわけ……」
『でも、きみはいつまで経っても、おれを愛してくれない。だから離婚して欲しい。このままでは、おれは精神的に毀れてしまう』
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