3 偶

2/4
前へ
/232ページ
次へ
 その昔、高校受験には学校群制度(一九六七年から一九八一年に実施。いくつかの学校で『群れ』を作り、その中で学力が平均になるように合格者を振り分ける方法のこと。各自治体の公立高校全日制普通科のみが対象であり、専門学科や国立、私立高校は対象にならなかった)があったが、三人とも偶々同じ群に属している。あたしの親も所属した東京の第二学区(新宿区、渋谷区、目黒区、世田谷区)だ。因みに、あたしと母親は同じ高校に通っている。当時の二十三群に含まれる高校だ。あたしの父親も第二学区だったが、二十一群なので高校が違う。能力的には父親が通った二十一群の方が平均学力は高かったはずだ。因みに浜野佳一が嘗て通った高校は二十四群に属している。  あたしと不美子と浜野佳一は違う大学に通っている。浜野佳一とあたしが理系で、不美子は文系だ。全員、浪人経験はない。それは偶々だが、浜野佳一とあたしが同じ会社に受かり、そこを就職先に選んだのも偶々だ。人生、何が起こるかわからない。  就職説明会で見かけなかったから、あたしと浜野佳一は入社式で初めて出会う。正直に言えば、あたしは同期の一人がイケメンで超ラッキーと感じている。仕事を真面目に熟(こな)してデキル娘をアピールをすれば、ひょっとして……などと淡い期待も抱く。新入社員同士で行った呑み会で浜野佳一に現在付き合っている相手がいないとわかり、俄然、その気になる。  が、冷静になって考えればわかる通り、浜野佳一はあたしに一ミリの興味も抱かない。だから同じ職場で五年経っても同期入社という関係性から進展しない。その前に別の偶然があり、浜野佳一が苅部不美子を見染めてしまう。その結果は残念なことになったが、不美子とのことは、浜野佳一にとって初めての大恋愛だったようだ。相手の不美子の方は終始冷めていたようだが、それは仕方がない。不美子の方も浜野佳一に一目惚れする、という偶然の事態が生じなかっただけだ。     
/232ページ

最初のコメントを投稿しよう!

27人が本棚に入れています
本棚に追加