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4 想
その数日後、会社の帰りが一緒になり、あたしと浜野佳一が会社の最寄駅まで二人で歩く。午後八時過ぎのことだ。
「そういえば、川原さん、彼女と一緒に暮らしているんだってね」
「ああ、うん。家賃が割安だから……」
「苦労して見つけたんだよ」
「夫としては悪くなかった、と思うよ」
「気になるかもしれないから先に言っておくけど、あそこ、ヤバイ物件じゃないから……」
「へえ、そうなんだ。だけど、あたしはてっきり……」
「大家が金持ちで多くの物件を安く貸してるんだよ」
「へえ、貴重な人材」
「おれも、そう思う。本当に正しいお金持ちだな」
「あたしの方も気になるかもしれないから言っておくけど、浜野くんとの夜のことは不美子に聞いてないから……」
「ああ、そう……」
「不美子は他人のことを簡単に触れまわる人間じゃないし、あたしも興味本位で聞かないし……」
「ありがとう、気遣ってもらって……」
「二人とも幸せそうなら聞いたかもしれないけどね」
「まあ、それなら、こっちから話したかもしれないけどね」
「ねえ、不美子が処女じゃなくて驚いた……」
「驚きはしなかったけど、意外だな、って……」
「遊びまわってたわけじゃないよ」
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