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「慣れてないから、それは思わなかったな。好きな人に抱かれたの……」
「あたしの知る限りでは、そういう話ではなくて、求められてどうしよう……っていうか」
「川原さんが相談に乗ったわけね」
「不美子に相談されたからね」
「どんなアドバイスをしたのかな」
「普通よ。自分で考えて決めなさい、って……」
「ふうん」
「不美子も興味があったみたいだし……」
「一度はしてみたいと思ったんだね」
「まあ、それもあったと思うな」
「彼女とおれとの相性は悪くなかった、と思うよ」
「ねえ、今、頭の中で思い出してない。生々しく……」
「それがさ、全然生々しくないんだ。不思議だよ」
「まさか、浜野くんの方も実は不美子を愛していなかった、とか……」
「それはないけど、しかし良くわからないな」
「時間が経ったらわかるのかな」
「どうだろうね」
「人は現在の自分の想いで過去を変えてしまう……らしいけど」
「おれには自分が将来、彼女のことをどんなふうに思い出すのか、見当もつかないな」
「そうね、まだ過去じゃないから……」
「うん。そういう意味では生々しい」
「やだ。結局、あたし、浜野くんと不美子のことを聞いているのね」
「川原さんは彼女とも、おれとも近いから、気になっても仕方がないんじゃないの」
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