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「今の段階では、まだわからない。だけど、そのつもり」
「あたしも共同出願の予定があるな。お前の担当部分が多いから叩き台を書け、って言われてる」
「凄いね」
「いや、凄くはないけどさ」
「おれの方は主にデータの纏めだな。弁理士との打ち合わせには参加するけど……」
「いろいろな人に聞いたけど、請求項の決め方とか、最後は弁理士に任せるにしても、基本は自分たちで書かないと良い特許にはならないって……」
「うん。職務発明は素人の思いつきと違って専門性が高いから、やっぱり当事者が舵を取らないとダメってことだよね」
浜野佳一とあたしが勤める会社から最寄駅まで約十五分の道程だ。結局、最後は仕事に関わる話となり、色っぽくならない。それでも電車に乗り、別の路線に分かれるとき、
「軽く一杯やらない」
と、あたしが浜野佳一に誘われる。あたしはどうしようか、と惑ったが、
「いや、今日は止めておく」
と思わず、断ってしまう。
それで左右に別れたが、その後岐路につきながら、あたしの頭の中に妄想が広がる。
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