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「今野くんは顔が大人になったよ。当時は童顔だったから……」
そんな会話をしながら乾杯だ。安い居酒屋だと人の声が飛び交い、会話ができない。それで、干物屋――だから正確には定食屋か――を選ぶ。時間的に人は多いが、天井から声が跳ね返って来るようなことはない。だから大声を出さなくても会話ができる。
「例の干物屋に決めたから、気が向いたら来てね」
不美子にも忘れず、メールを送る。
「ああ、ビールが仕事の疲れを吹っ飛ばすわ」
「明里さん、今、何をやってるの」
「中小企業でモノ作りですよ」
「そういえば理系だったね」
「今野くんは……」
「こっちは中小の商社の営業だよ」
「ふうん」
「主に海外要員だな」
「じゃ、英語はペラペラだ」
「ジャングリッシュ(日本語訛りの英語)だけどね」
「でも、通じてるんでしょ」
「時々通じてないこともあるよ」
「それってマズくない」
「相手が気付かなけりゃ問題ない」
「今野くん、やっぱり性格が変わったでしょ」
「うん、海外に行って変わったよ。東アジアに行ってタフになった」
「ウチは中国に進出してるけどね。だけど臨床系だから販売許可を得るのに物凄いお金を取られる」
「ああ、中国は、ね」
「あと、EUも法律ガチガチで……」
「これまでの日本が甘過ぎたから……」
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