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縁のポートレイト:暖色
村井 昭彦(むらい あきひこ)には、家族がいない。
そのためか、自分がいずれ家族を持つかもしれないということに恐怖を抱いていた。
(もし子どもができたら、俺はその子どもに殺されるかもしれない)
なぜそう思ったのか、どうしてその考えが消えないのか、昭彦自身にもわからない。
だがそれは厳然と彼の中に存在し、だからこそ彼は未来を見ずに今だけを楽しむ生き方を選んだ。
そんな中、ひとりの女性と出会う。
「私、あっくんと結婚したい!」
彼女は満面の笑みで、彼が抱える思いなどまったく気にせずにそう言った。そのあまりにあけすけな言葉を、彼は拒絶することができなかった。
彼女のシンプルで強い思いは、今まで彼が持ち得なかった気持ちを生み出すこととなる。
(…もしかしたら、この子となら…)
心に浮かんだ期待は、淡い色をしていた。
しかし、彼女とふたりで思い出を作っていくことで、その色はだんだんと濃くなった。
やがて彼は自身の人生をあらため、彼女とふたりで生きていこうと考えるようになった。就職に役立つスキルなどはまったく持っていなかったが、とにかく社会的に認められる男性になろうと決意した。
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