縁のポートレイト:暖色

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 警官も何事かと、入ってきたふたりを見た。  女性はピンクがかった赤のワンピース…というよりは、ドレスと呼ぶに相応しい衣装めいた服を身につけていた。  老人は、女性の華やかさとは対象的に、シンプルな黒いスーツを着ている。 (…貴族…?)  昭彦が思わずそんな言葉を思い浮かべてしまうほど、ふたりは浮世離れしていた。 「…あっ!」  昭彦と警官が驚きに呆然としている中、女性が机に置かれた財布に気づく。 「それですわ! わたくしのお財布!」 「え?」  昭彦と警官が同時に財布を見る。  女性は昭彦のそばにやってきて、彼の両手をいきなりつかんだ。 「あなたが拾ってくださいましたのね!? 本当にありがとうございます!」 「え? えぇ…!?」  両手をつかまれた昭彦は、視線を財布から女性へと戻さざるを得ない。 (あっ…いいにおい)  鼻先が彼女の方を向いた時、香水の芳香をダイレクトに感じて少しばかり頭がくらくらした。  彼が何も言えずにいると、女性は喜びの声をたたみかけてくる。 「ぜひお礼をさせてくださいまし! お時間ございますわよね!?」 「え、えっと、あの…その……?」  彼女の言葉で我に返った昭彦は、どうしたものかわからず警官に目をやった。     
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