縁のポートレイト:暖色

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 昭彦はすぐに視線を女性へと戻し、笑ってごまかす。  しかし彼女にはごまかしが通用しないようで、じっと見つめられてしまった。 (…マズい)  このままでは、自分の心を寒くした風について説明しなければならなくなる。  それを防ぎたい彼は、どうにか彼女の気をそらさなければならないとこんなことを言った。 「こ、こういう車に乗ったの、初めてなんで…緊張しちゃって」 「……」  彼の言葉に、女性は少しだけまぶたを大きく開く。  だが次の瞬間、顔をしかめてこう言った。 「わたくし、気に入りませんわ」 「…え?」 「さみしげで悲しげなそのお顔が、気に入りません!」 (えっ!?)  昭彦は驚いたが、声をあげることができなかった。  それはあまりに驚いたというよりは、単純で物理的な問題が引き起こされたためだった。 (…なんだこれ?)  女性の両手が、彼の顔を強く挟み込んでいた。  彼女は先ほどの言葉を口にした直後、彼のそばに素早く移動していた。そして両手で彼の顔を挟み込んだのだ。  しかもそれだけでなく、彼女は吐息が触れるほどに顔を寄せてくる。彼に向かって、これまでよりも明らかに強い口調でこう言った。     
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