縁のポートレイト:暖色

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 その甲斐あってか、彼はある会社に採用される。 「村井 昭彦です! よろしくおねがいします!」 「おー、元気があっていいね! がんばってくれよ」  会社は、彼を好意的に迎え入れてくれた。  やる気だけしか持っていない彼に対して、盛大な歓迎会を開いてもくれた。  それが彼の中にある期待を、希望へと変える。 (今まで好き放題にやってたけど、これからは真面目に働いてあの子と幸せになるんだ……!)  そして、彼女との明るい未来を心に描きながら働くこと3ヶ月。  晴れていたはずの空は、いつの間にか分厚い黒雲で覆われていた。  それは彼を、絶望という災害の中に閉じ込めてしまう。 「今日も残業よろしく。もちろん、朝までな」 「え…!?」 「え、じゃないよ。え、じゃ」  中年の上司は、驚く昭彦にやれやれと呆れてみせた。 「歓迎会で聞いたよ? 君、結婚を考えてる彼女がいるそうじゃないか…だったら、ちょっと残業が続いたくらいでうろたえてちゃダメだよ」 「い、いや、でも」 「世のお父さんってのは、こういう大変なことを乗り越えて家族を養ってるんだ。君もそろそろ、覚悟を決めなきゃいけないんじゃないのかね?」 「それは…」     
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