噂とキス

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それから遥は顔を見せなかった、 下校の時間になると、いつの間にか教室に来てたのに、今日は来ない。 (結局、一時限目の時だけでしか見てないなぁ) 下駄箱に向かう途中、すれ違った子達がテンション上がっていた。 「なんで2年の下駄箱にいるの?」 「でも、ラッキーだよね!超可愛い!」 少し嫌な予感がして、それは見事に的中した。 「菜月ちゃん、一緒に帰ろ~?」 下駄箱付近に居た子達が一斉にどよめく。 「え、あれ三組の?」 「うそ~なんで!?」 (すげ、面倒くさ) 私は構わず靴に履き替えると歩き出す。 「待ってよ~」 南櫻子。 私の1つ上の先輩で、彼女から昨日告白されて、断って、そしてキスをした。 「ねぇ、ちょっと待ってよ~?」 追いついてきた櫻子は菜月の腕に絡んできた。 「先輩、その語尾に?はやめてください。それに、昨日断ったはずですけど?」 「うん。振られたね、私。」 けどね、と櫻子は背伸びをして菜月の首に腕を回してキスをしてきた。 悲鳴に近い声があちらこちらから聞こえる。 「昨日、君キスしたでしょ?私に。」 「それは思い出にって、先輩が。」 「キスをしたって事は、私の事嫌いではないってコトだよね?だから諦めるのをやめたの。」 「いつか振り向くって?」 「そ。だって好きになったんだもん。手に入れたいじゃない?」 櫻子はまたキスをしようとしてきた。 菜月は櫻子の唇を手で塞ぐ。 「とにかく、こんなトコでコレはやめてください。今朝だって先輩に憧れてる子に絡まれて大変だったんですから。」 口を塞がれキスを出来なかった櫻子は少しふくれっ面になった。 「どうして?私は好きな事は好きって言ってるだけよ?それに私に憧れてる?笑っちゃうわ!憧れてるだけで何も行動に移す事の出来ない人達に、とやかく言われたくないわ。明日、言ってやればいいのよ、クソくらえって。」 ふくれっ面のまま、大きな声で言うものだから、周りで傍観してた子達は視線を外して歩き出した。 「・・・っぶ!あはは!」 私は思わず声に出して笑ってしまった。 櫻子も周りもキョトンとしてる。 「先輩。先輩みたいな人がいう言葉ではありませよ?クソくらえ?ダメだ、、、あはは~!」 下校途中の道に響き渡っていたのは私の笑い声だけだった。
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