彼女はデートがしたい

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 確かに、デートと言っても何処に行くのかを忘れてしまっていた俺は、夏目さんのすすり泣く声をBGMにひたすらスマホのメモ帳を振り返った。しかし、俺はどうでもいい事でも直ぐにメモを取るという癖があった為、中々見つからなかった。  そんな焦りに焦った俺に光が差したのが、探し始めて三時間後の事。  全てに目を通したが無かった。諦めて素直に忘れていたことを謝ろうと決意した俺だったが、何となしに冷蔵庫に張ってあったカレンダーを見てみると。 〝五月一二日 遊園地へGO〟  更にはその下に〝ネコムチランドを希望!!〟と丸い文字で書かれていた。その時の俺の表情は恐らく、ムンクの叫びよりムンクムンクしていたと思う。  そこからは誰が見ている訳でも無いのに寝室の扉へ向かってスライディング土下座をかまし、芸術的な謝罪を夏目さんへ告げた。しかし、帰って来たのは「遅すぎじゃろ!」という叱咤と勢いよく開かれた扉による頭頂部への凄まじい攻撃。  激しい痛みに転げ回った俺を見つめる夏目さんの瞳は、過去一サディスティックな光を帯びていて少しゾクゾクした。あ、やっぱり撤回。怖かったですはい。  といった感じで俺の様子を見て一しきり笑った夏目さんは今回の事を水に流すと言ってくれた。その代わり、希望していたネコムチランドに連れていけ、となって現在である。  夏目さんの機嫌を取り戻せるのであれば、このくらいの出費どうってことない……ないったらないんだ。  俺は後でこっそりバイト先にシフトを増やしてくれと連絡することを心に決め、夏目さんのネコムチへの熱量に若干引いているスタッフさんに声を掛けた。 「すいません、何枚か写真撮って貰ってもいいですか?」 「え、えぇ。構いませんよ。可愛らしい彼女さんですね」 「ハハハ。普段はしっかりしているんですけどね。ネコムチになるとタガが外れると言いますか……」
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