彼女はデートがしたい

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 なんていう喜劇を脳内で繰り広げる俺はマジで気持ち悪い。と思いつつ、実際慣れているというのもあって何てことはない俺は、大袈裟なリアクションを取ったのち、最初に気になっていた事――何故今日は朝から機嫌がいいのか、という質問を切り出す。 「してして、夏目さん? 俺さっきから気になってたんだけどさ」 「ん? 何じゃ? あの扇が新調されているのが気になったのか?」 「ちが――」 「あれなら明日の〝でいと〟に備えて予備を取り出しただけじゃぞ?」 「…………え?」 「やはり新品というのは良いなぁ」 「…………え?」  ま、待て待て待て待て。扇何てどぉぉぉでもいいぞッ! でいと? デート! 何デートって! 俺以外の男とデートですか!? 何にも聞かされんてないんだけど! っていうか、いつの間に浮気相手見つけてんのぉぉぉ!?  俺の脳内で警報がビンビンと音を立て、急激に冷まっていく体温のせいか冷や汗がドバドバと分泌される。  あからさまに動揺を隠せない俺は震える手を夏目さんの太ももに置き、数秒置いてゆっくりとぺちぺち叩いた。対する夏目さんは不思議そうな顔をしている。何でだよ。 「どうしたんじゃ」  首を傾げた姿も、今となっては忌々しい……。 「ど、どどどどどどうしたって? そ、それはこっちの台詞だよ!」 「もぉ。なんじゃなんじゃ。効果音を口で出しおってからに。今日は情緒不安定なのか?」 「う、うるさあああい! デートってなんじゃデートって!」  あまりの動揺に声が裏返ってしまった。その恥ずかしさを取り敢えず心の奥底へ閉じ込め、俺は焦点の定まらぬ瞳で夏目さんを見つめた。  しかし、彼女の見せた反応は――きょとん。
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