彼女はデートがしたい

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   ***  翌日。俺と夏目さんは隣町にある大きな遊園地――ネコムチランドに訪れていた。  何故ここを選んだのか、という事についてだが、僕と夏目さんの寝室をネコムチが占領しているとう事で察して欲しい。正直なところ、住んでる場所から近いから嫌だったのだが。クラスメイトとかに会ったら面倒臭いし。  何はともあれ、来たからには存分に楽しみたいと思う。  此処に来るまでは日曜日ということもあり、人でごった返しているだろうと思っていたが、案外そうでもなくアトラクションにはすんなりと乗れそうだ。  俺は柄にもなくウキウキしつつ、チラリと隣を見やった。 「見てみろ幽! ネコムチが! ネコムチがあんなに沢山おるぞ! ここは天国かぁぁ!」  そこには子供のように瞳を輝かせて燥ぐ夏目さんの姿が。あらゆるところに点在するネコムチの銅像や看板、風船を見て黄色い声を上げる夏目さんだが、彼女の視線を最も釘付けにしたのは――スタッフさんに連れられたネコムチの着ぐるみ。  何も言葉を発さずに俺とネコムチを交互に見る夏目さんは、俺からすればこの中で一番可愛い。何て言うてる場合ではない。彼女の思っている事を汲み取ってやるのが彼氏というモノだ。 「なに? あれが欲しいんですか? 仕方がないな」 「違う! いや違わないけど! 持って帰れるのなら滅茶苦茶欲しいけど! そうじゃのうて、儂はあのネコムチと写真を撮りたいのだ!」  やっべ、俺彼氏として失格じゃんか。  袖を捲くり歩き出した俺を止めた夏目さんは、取った手をそのままにずんずんとネコムチへと歩いて行く。  その姿は本当に子どものようで、俺は少し無理をしてでも来てよかったな、とバックポケットに入った薄い財布を一撫でした。  昨日、あれからどうなったかについてだが。一応俺は夏目さんが寝室に籠り出してから直ぐに謝りに行った。だが案の定彼女は許してくれなかった。何でも「約束を忘れる者がおるか!」との事。
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