俺の彼女は人では無い

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 ――世の親父共に告ぐ。  事あるごとに自分の嫁さんを〝鬼嫁〟と称するんじゃない。よくSNSとかで目にする内容だと、八割方親父さんが悪いぞ。やれ飲み会だーやれ残業だーと言い訳をつらつらと並べるのはいいが、それは本当に断れない事なのか? まあ、中には断れないことだってあるだろうが、そういった場合は自分の中でスケジュールを調整したり出来ないのか? 大切な場なんて、そう唐突にやってくるものじゃないだろう。もう少しは自宅で己の帰りを待ってくれている嫁さんの事を考えたらどうなのだ。  と、言いたい事はここまでにしておこう。本題は、そんな事では無く〝鬼嫁〟と称すことだ。親父たちにとって鬼嫁とは何を差す? 怖い嫁さんの事? 自分を尻に敷く嫁さんのこと? 俺からしれ見ればどちらも〝否〟だ。本当の〝鬼嫁〟を知らなさすぎる。  ゴホン、ではでは……この俺が本当の鬼嫁というモノを教えて進ぜよう。何たって俺の彼女は――〝鬼〟だからな。クッソ可愛いぞおい。    ***  単刀直入に、俺は玄関で正座させられている。ここで重要なのは、しているではなくさせられているという点だ。  まあ、俺が悪い事をしたのは当然だとして――っておい。全然してないから。全く持って身に覚えがありません。今日は普通に学校へ行き、帰りに夕飯で足りない材料をちょちょいと買ってきて、近所に住むおば様たちと井戸端会議を一〇数分繰り広げた、という極々ありふれた日常を謳歌していただけである。何処に悪い点がある?  しかしながら、俺の正面に仁王立ちしている女性――もとい彼女である鬼柳夏目(きりゅうなつめ)さんはそりゃもう「激おこですけど」と言いたげな表情で俺を見下ろしている。  ……マジで何した俺?
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