俺の彼女は人では無い

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 玄関先というのは最後まで土足が許された室内という事もあり、足元に外から持ち込まれた砂利や小さなゴミが多少存在している。それらが俺の脛にこれでもかというくらいめり込みやがって地味に痛い。身動いでしまうのは仕方がないこと――。 「――のぉ? お主、何故こうなっておるのか、まさか分からぬとは言わせぬぞ?」 「ひゃっ!? は、はい……」  ではなかったようだ。  少し腰を上げた俺を目ざとく睨みつけた夏目さんは、キラリと〝黄色い〟瞳を光らせて手に持った扇子をぺしりと俺の頭に乗せた。  思わず驚きで変な声を出してしまったが、理由はそれだけではないのだ。  仮にこの構図を文面に起こしたとして、それだけではただ扇子を頭に乗せられて驚いた小心者になってしまうだろう。しかし、しかしである。傍から見れば普通に怒られている場面であるが、もしもこの〝扇子〟というモノが鉄製(・・)であり、尚且つとんでもない重量を保持しているとしたら……ね?  あまりの痛みに涙が出そうになるが、だからといってまた少しでも動けば同じ目に合う――いや、更に酷い目に合いかねない。  俺は人知れず生唾を飲み、落ちていた視線を恐る恐る夏目さんへと向けた。 「せ、せめて買い物して来たものだけでも……冷蔵しておかないと」 「黙れ。お主がさっさと先程の件を儂に詫び、その対価として何をするのかを簡潔に申せばそれで済むことじゃ。さっさとせい」 「えェェ……」  それが出来りゃこんな長い時間正座させられとらんわ……とは言えず、意思と反して口を出てしまった声が一人トテトテと歩いて行く。  こうなったら一か八かで――いや、そうして今までどんな目に合わされてきた事か。忘れたとは言わせないぞ俺。でもな、このままだと終わりそうも無いしな。
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