彼女はデートがしたい

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 とある休日。詳しくは五月の第二土曜日。学校が休みで特に何もやることが無かった俺は、いつにも増してご機嫌な夏目さんを凝視して時間を潰していた。  え? 気持ち悪いって? 馬鹿言うなよ。彼女は俺の彼女だぞ? あ、なんか変だな……夏目さんは俺の彼女だぞ? 彼女を見つめて何が悪いって言うんだ! こんなに可愛い人を見つめるなという方がおかしいだろ! ……駄目だ、流石にこれは自分で言ってても気持ち悪いかもしれん。  あまりの暇さ脳内で独り会話を繰り広げていた俺は、自分の思考回路の気持ち悪さに吐き気を催してしまった。よくよく考えると、どんなに好きな相手であろうがずっと凝視され続けるというのは、嫌にならないにしても居心地の悪さがある。  そう考えると夏目さんに悪いことをしたな、と思った俺はソファでネコムチを抱きしめる彼女の背後を取り、そろりと近づいて行く。が――。 「さっきからなんじゃ? 儂をよう見つめよると思ったら、今度は忍び足で迫ってきおって。どれだけ暇なんじゃ?」 「ぐはッ! 自分で分かってても他人から言われると辛い……」  気配でも察知したかのように、振り向くことなくそう声を掛けてきた夏目さん。急に声を掛けられて肩をビクつかせてしまったが、それ以上に彼女の言い放った「どれだけ暇なんじゃ?」という言葉が脳内で反響されてグサグサと俺の心を突き刺していく。  ただでさえ可愛らしい顔をぷっくりと膨らせた夏目さんの表情は正しく兵器そのもので、俺は聴きたかったことも忘れて熱くなった鼻頭を抑えた。  この時代に生まれた我ら人類は本当に恵まれていると思う。何故なら――このような最終兵器が存在するのだから! 夏目さんがいれば戦争なんて起こるかよ! ワハハッ! ワハハ――。 「ワハハ――あぐっ!」  脳内がお花畑になってしまった俺は、夏目さんから頂戴した〝ネコムチタックル(人形投げただけ)〟を顔面に諸に喰らってしまいよろけてしまう。
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