彼女はデートがしたい

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「いてて。夏目さんや、酷いではないか」  更に熱くなってしまった鼻を抑え、俺は詰まった声で彼女へそう告げる。がしかし、タイする夏目さんは何の悪びれた様子もない! なんて人っ! 「どう考えても、今のはお主が悪いと思うぞ。儂何にもわるくないもん」 「ゴハァアッ!」 「ヒッ! な、なんじゃ気持ち悪いッ!」  続けて語尾に〝もん〟を付けるという奇跡のコンボ! 俺、クリティカルヒーット!  吐血を吐くような真似をした俺を、結構マジで気持ち悪がる夏目さん。それに少々心を痛めた俺は、コホンと咳ばらいを挟んでいつもの様子に戻した。ふざけるのも大概にしないと、本当に愛想つかされかねん。 「えー、夏目んさんや」 「だから何じゃと言っておろうに。それと、その〝夏目さんや〟っていうの止めんか。なんかお婆ちゃんになった気分じゃ」 「……口調はお婆ちゃんだけ」 「そこォ!」 「ひぃぃぃ! 扇はあかん! この扇はあかんねんて!」  ちょっと冗談を言えばこれだ。可愛いが沸点が低すぎますぞ夏目さんや。  俺は彼女から投げられた超重量級の扇を何とか受け止め、ふら付きながらそれをテーブルに置いた。そのまま流れる様に夏目さんの横へと腰を沈めた俺は、冷や汗を親指で拭い取って彼女へ向き直る。その表情が引き攣った笑顔だという事は言うまでもない……。 「お、落ち着いて落ち着いて。はい、ひっひっふー、ひっひっふー」 「すまん幽。その定番の流れ糞つまらんわ」 「分かってますよ!」  もうだめ……誰かハンカチ投げて。この人可愛い顔して俺のHPどんどん抉ってくんだけど……。
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