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「いいよ。今は泣きたい気分なんだろう? 好きなだけ泣いた後に、また笑ってくれたらそれでいい」
花衣はまた「うっ……」と詰まって、「そうやって、一砥さんがわざと泣かせてるんですよぉ~~~」と号泣した。
そしてまた、わぁんと声を上げ、一砥の胸で子供のように泣く。
まるで、尊い禊(みそぎ)のように。
一砥の言葉と態度は、花衣の心に溜まった汚泥を流し清め、その奥に仕舞われた純粋で真っ直ぐな素顔を引き出してくれた。
ひとしきり泣いた後で、花衣はティッシュで盛大に鼻をかみ、照れ臭そうに小さく笑った。
「何だか私、一砥さんに出会ってから、一生分の涙を流している気がします」
「それは、俺が悪いのか?」
シーツの上で憮然と胡座を組む一砥を見つめ、花衣は「いいえ」と笑顔で首を振った。
「悪くないです。むしろ、泣けば泣くほど、私、自分を好きになれる気がするから……、すごく感謝しています」
「そうか……」
一砥は目を細め、やおらサイドテーブルに置いた包みに手を伸ばした。
「じゃあこれを渡したら、また泣かせてしまうかな」
「え?」
「誕生日プレゼントだよ。開けてみて」
乞われるように言われ、花衣は素直にリボンと包装紙を解いた。
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