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プレゼント交換を終え三人が和やかに談笑していると、年嵩のメイドが慌てて部屋に入って来て、「お嬢様。奥様がお帰りになりました」と亜利紗に小声で伝えた。
「えっ、なんで!」
亜利紗の不満を滲ませた声に、紫苑と花衣も顔を上げ視線を合わせた。
「今日は婦人会の集まりで遅くなるって聞いたけど」
「それが、インフルエンザで欠席の方が多く、また日を改めることになったそうで……」
「インフルエンザ~~~?」
亜利紗は不機嫌を露わにし、「本当に、こんな日に限って早く帰ってくるなんて……」とブツブツ言いながら席を立った。
「ごめん、ちょっと行って来る」
二人に断りを入れ、亜利紗はそのまま食堂を出て行った。
花衣は閉じられた扉を見て、「紫苑さん」と抑えた声で訊ねた。
「もしかして亜利紗って、お母さんとあんまり仲が良くないの?」
「ああ、まあね」
紫苑は紅茶のカップを手に素っ気なく答えた。
「亜利紗の母君は、あの祖父の言いなりだからね。娘に何かと厳しく当たるし、母娘関係は、良好とは言い難いね」
「そっか……」
厳しく躾けられ、母親に苦手意識を持っていたのは花衣も同じだった。
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