第十一話「Happy Birthday」

10/41
前へ
/41ページ
次へ
    2  プレゼント交換を終え三人が和やかに談笑していると、年嵩のメイドが慌てて部屋に入って来て、「お嬢様。奥様がお帰りになりました」と亜利紗に小声で伝えた。 「えっ、なんで!」  亜利紗の不満を滲ませた声に、紫苑と花衣も顔を上げ視線を合わせた。 「今日は婦人会の集まりで遅くなるって聞いたけど」 「それが、インフルエンザで欠席の方が多く、また日を改めることになったそうで……」 「インフルエンザ~~~?」  亜利紗は不機嫌を露わにし、「本当に、こんな日に限って早く帰ってくるなんて……」とブツブツ言いながら席を立った。 「ごめん、ちょっと行って来る」  二人に断りを入れ、亜利紗はそのまま食堂を出て行った。  花衣は閉じられた扉を見て、「紫苑さん」と抑えた声で訊ねた。 「もしかして亜利紗って、お母さんとあんまり仲が良くないの?」 「ああ、まあね」  紫苑は紅茶のカップを手に素っ気なく答えた。 「亜利紗の母君は、あの祖父の言いなりだからね。娘に何かと厳しく当たるし、母娘関係は、良好とは言い難いね」 「そっか……」  厳しく躾けられ、母親に苦手意識を持っていたのは花衣も同じだった。     
/41ページ

最初のコメントを投稿しよう!

545人が本棚に入れています
本棚に追加