第十一話「Happy Birthday」

12/41
前へ
/41ページ
次へ
「あ、はい。そうです」  美貌の高蝶夫人に見つめられて、花衣は赤い顔で頷いた。  華枝は亜利紗に比べると地味な容姿だったが、品のある瓜実顔に細いアーモンド型の目、弧を描いた柳眉がたおやかに美しかった。  向かい合う華枝と花衣は、頬から顎にかけてのラインや通った鼻筋など、見る人が見れば良く似ていることが分かる。  しかし二人の本当の関係を知らない亜利紗と紫苑は、珍しく他人に興味を示した華枝を、驚いた顔で見つめるだけだった。  華枝は穏やかな微笑を浮かべたまま、「とても素晴らしいショーだったわ。モデルの仕事はあのショー一回きりと聞きましたけれど、そうなの?」と花衣に問うた。 「は、はい……」  花衣が頷くと、華枝は独り言のように「あら、もったいない」と呟いた。 「LuZの雨宮社長と婚約されたという話は、本当かしら」 「はい……」 「学校を卒業されたら、すぐに挙式される予定なの?」 そ、その予定です……」  亜利紗と紫苑は黙ったまま、自然と顔を見合わせた。二人を間にして、華枝の花衣に向けた質問は続いた。 「雨宮社長とは面識がありますわ。仕事熱心で女性との浮いた噂は一度も聞かなかったけれど、そんな方とどうしてお知り合いに?」     
/41ページ

最初のコメントを投稿しよう!

545人が本棚に入れています
本棚に追加