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「あ、はい。そうです」
美貌の高蝶夫人に見つめられて、花衣は赤い顔で頷いた。
華枝は亜利紗に比べると地味な容姿だったが、品のある瓜実顔に細いアーモンド型の目、弧を描いた柳眉がたおやかに美しかった。
向かい合う華枝と花衣は、頬から顎にかけてのラインや通った鼻筋など、見る人が見れば良く似ていることが分かる。
しかし二人の本当の関係を知らない亜利紗と紫苑は、珍しく他人に興味を示した華枝を、驚いた顔で見つめるだけだった。
華枝は穏やかな微笑を浮かべたまま、「とても素晴らしいショーだったわ。モデルの仕事はあのショー一回きりと聞きましたけれど、そうなの?」と花衣に問うた。
「は、はい……」
花衣が頷くと、華枝は独り言のように「あら、もったいない」と呟いた。
「LuZの雨宮社長と婚約されたという話は、本当かしら」
「はい……」
「学校を卒業されたら、すぐに挙式される予定なの?」
そ、その予定です……」
亜利紗と紫苑は黙ったまま、自然と顔を見合わせた。二人を間にして、華枝の花衣に向けた質問は続いた。
「雨宮社長とは面識がありますわ。仕事熱心で女性との浮いた噂は一度も聞かなかったけれど、そんな方とどうしてお知り合いに?」
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