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「え、えっと。かず……雨宮社長のご友人の一色奏助さんが、私の叔母夫婦が経営している食堂の常連さんで……。それと、叔父が雨宮社長のお祖父様の、真邊瑛一朗氏の弟子で……、そういう繋がりです」
「あら、真邉先生の。懐かしいわ。私も真邉先生の作られる料理のファンでしたの。では花衣さんの叔父様も、きっと素晴らしいシェフなのね」
叔父のことを褒められて、花衣は思わず笑顔になった。
「はい、叔父の料理は最高です。ぜひ一度、うちの店にいらして下さい」
笑顔の花衣を見て、華枝もにっこりと笑った。
「そうね、ぜひ。それにしても、雨宮社長はとてもハンサムな方だけれど、少し冷たい印象も持ちましたわ。あなたには違うのかしら?」
花衣はまた顔を赤くして、「は、はい」とうつむいた。
「かず……雨宮社長は、とても、優しくして下さいます……」
「……そう」
聞きたいことは全て聞き終えて、華枝は「それは何よりね」と呟くように言った。
そしていきなり踵を返し、「楽しい集いのお邪魔をして、ごめんなさいね。紫苑さん、花衣さん、どうぞごゆっくり」と挨拶を残し、部屋を出て行った。
母親が退室した途端、亜利紗は「びっくりしたぁ……」と声を出し、脱力したように自分の椅子に座り込んだ。
「……私も、驚いた」
亜利紗に同意して、紫苑も静かに腰を下ろす。
「え、何のこと?」
二人に釣られて席に着き、花衣だけがキョトンとしていた。
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